マンガで人生が変わる

『もやしもん』という発酵をテーマにしたマンガをご存じですか?

主人公に農大生の男の子がいるのですが、彼が「目に見えない微生物たち」が見える設定で、かわいらしくキャラクター化された「菌」たちが登場するあのマンガです。アニメ化、映画化もされているくらい人気の作品ですが、実は私がこの仕事をするきっかけになったのがこの漫画なのです。言い換えれば、私は「マンガで人生が変わった」といっても過言ではありません。

思い返せば5年前。元々は自宅の本棚に妻が持っていたマンガとして置かれていたのですが、何となく手に取り読み進めていくと、思いのほかその「もやしもんワールド」にハマ

ってしまいました。ストーリーの中身や展開自体も面白かったのですが、何よりもそのテーマにした「発酵文化」というものが、いかに人類の営みに影響を与えているのか、ということに気づくことになり、また感銘を受けました。特に「食文化」という所で考えても、味噌、醤油、みりん、酢、納豆、日本酒、焼酎、チーズ、ワイン、ビール、、、人々が生きていく中で必ず必要とするものはすべて「発酵」につながっていたんですね。

そこから、それまで特に料理などを自分から進んでするタイプではなかったのですが、夜中のキッチンでスーパーで買ってきた「米麹」をタッパーに入れて、塩を混ぜて、水を入れて、混ぜて…3日間ほど毎日混ぜてお世話をしていたのですが、最初あまりいい香りがしなくて「失敗したかな…?」と思いつつその後も混ぜ続けていると、気が付くととてもいい香りがするようになって、「発酵ってすごい!」と感動しました。

そこから自宅で味噌をはじめ、さまざまな発酵食品を手造りするようになり、そこから実際に製造されている蔵を訪ねてはお話を伺う中でさらにハマっていき…気が付くと仕事としてビールを造っていました。(この経緯をすべてお話しすると3日かかります笑)

先ほど「ビールを造る」と言いましたが、実際に「ビール」と呼ばれる液体を造り出しているのは、麦芽から造り出した糖を分解して、「アルコール」と「炭酸ガス」を生成している「ビール酵母」たちです。彼らなくしてビールは生まれません。我々がしているのは温度調整や、清潔さの保持、必要な栄養分の確保など、彼/彼女たちの食生活の環境を整備しているだけ、とも言えます。そんなフツーには「目に見えない」酵母たちに感謝をしつつ、これからもおいしいものづくりに取り組んでいきたいと思います。